取締役の不当解任・会社内紛争のご相談は三橋総合法律事務所へ

初回無料相談

お知らせ

ホーム > 事例 > 取締役会決議を経ない取引ー解任の正当理由の存否ー

取締役会決議を経ない取引ー解任の正当理由の存否ー

2021年10月20日事例

 会社法上、取締役が業務執行をする際に取締役会決議を経ることが必要とされることがあります(会社法356条1項・365条1項)。この取締役会決議を経ないままに取引を行った取締役は原則として任務を怠ったものと考えられます。さらに、会社に損害が生じた場合には損害額の推定されることになります(会社法423条2項)。これが会社法の建前です。
 ところが、会社実務においては、逐一取締役会決議を取らないままに取引をしているケースが見られます。そもそも取締役会決議をしないことが常態化している会社はもちろんですが、そうではなく取締役会決議を日常的に行っている会社であっても取締役会決議を経ないままに取引をすることがあります。このようなことが起こる背景は様々ですが、例えば、緊急で取締役会を開催している暇がない取引であって株主が承諾していた場合や、会社支配者が取引を黙認しており取締役会決議を経ることが躊躇われる場合などがあります。
 このような状況にある会社において、取締役間や株主間で人間関係のもつれがあった場合には、会社側は取締役会決議を経ていないことを理由として取締役に対して責任追及をしたり(会社法423条)、解任の正当な理由にしたりします(会社法339条2項)。
 しかし、取締役会決議を経ないという形式的な会社法違反があったとしても、上記のような相応の理由がある場合には、裁判所は、取締役の責任を認めず、また、解任の正当な理由を認めません。
 例えば、会社法356条に関して株主総会が実際に開催されていなくても、全株主の同意があるとして、取引を無効としなかった判決があります(最高裁判所昭和49年9月26日判決・民集28巻6号1306頁)。また、株主「全員」の同意がなくても、「実質的に」全株主の同意があるときを株主総会決議と同視した裁判例として、会社法361条に関して、東京高裁平成7年5月25日判決・判タ892号236頁や、大阪高裁平成元年12月21日判決・判タ715号226頁などがあります。さらにこの理を進めて、実質的に全株主の同意がなくても、「多数派株主」が「黙認」していた事案で株主総会決議を不要とした裁判例として、東京高裁平成15年2月24日判決・金判1167号33頁などがあります。