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選択肢を知る

2019年08月20日事例

 ニコラス・グレゴリー・マンキューは「経済学の10大原理」のひとつとして「人々はトレードオフに直面している(People Face Trade-Offs)」という原理を掲げます。トレードオフとは、「あちらを立てればこちらが立たず」、つまり、両立しない選択肢のことです。
 取締役は、日々の経営判断に際して多くのトレードオフに直面して選択をしています。
 しかし、トレードオフに直面する前提として、「選択肢」が複数あることを知っている必要があります。客観的には複数の選択肢が存在するとしても、主観的には選択肢が存在することを知らない場合には、人はトレードオフで悩むことはありません。トレードオフに直面することは大きな心理的負担になることがありますから、トレードオフで悩まないことはある意味では幸せなのかもしれません。また、人が複数の選択肢を知らなくても、既に行っていることが結果として良い結論に至るのであれば大過はないかもしれません。
 しかし、選択肢を知らないことによる大きな問題は、人が無意識に誤った選択をしているにもかかわらず、誤った選択であることを知らず、状況を悪化させていることに気づかないことです。「何もしなければ現状維持になるだろう」という考えで選んだ「何もしない」という行動が、実は最悪の結論に至る誤った選択肢だったということもあります。選択肢の存在を知ることは、誤った結論に至る道を回避することにつながります。また、選択肢のなかから主体的に選び取るという行動こそが、人を自律的存在たらしめるものです。
 ただし、法的紛争に巻き込まれた取締役は、より良い選択肢が何であるのか知らないことが普通です。他方で、法的紛争に精通した弁護士は、取締役に選択肢を示すことができます。そして、選択肢を知った取締役は、法的紛争から抜け出すことができ、また、自律的な人生を過ごすことができます。